第9回コンピュータ将棋選手権 YSS 9.0 準優勝記

以下の自戦記はNIFTY-Serveの将棋フォーラムに流したものです。

1.1次予選
2.2次予選 前半
3.2次予選 中盤
4.2次予選 後半
5.決勝 前半
6.決勝 中盤
7.決勝 後半

1.1次予選
00591/00592 CXJ00674  山下 宏     YSS準優勝記 1次予選
( 8)   99/03/26 03:53

第9回コンピュータ将棋選手権のYSSの棋譜と、観戦記を書きます。
また、会場の雰囲気を少しでもお伝えできたらと思います。

大会は今年で9回目で、シェラトンホテルで行われるのは実に今年で5回目にも
なります。東京ディズニーランド側にある立派なホテルで、春休みなのもあり、
ミッキーマウスの袋を抱えた学生さんや子供たちでごった返していました。

今年は、予選が2つに分かれ、午前中1次予選5回戦、午後は2次予選7回戦、と
とてつもなくハードなスケジュールとなりました。
結局この日、朝は8時30分頃から始まり、終わったのは夜10時近くでした。

会場はテント小屋のような「グラン・パオ」。
当初は54チームのエントリーがあったのですが、辞退が相次ぎ最終的には40チーム
に落ち着きました。電源容量の問題などから、運営の方では液晶ディスプレイを用
意するなどしていたのですが、参加者減はその意味ではよかったかもしれません。

1次予選で注目していたのは、噂で前評判の高かった北朝鮮のプログラム
「シルバー将棋」でした。彼らは「シルバー囲碁」というプログラムも
作っており、これが昨年の第4回FOST杯で優勝する、という快挙をなしています。

プログラマ(複数のグループだそうです)本人はビザの関係で参加できない
そうで、代理の方が操作していました。

囲碁で負けて、将棋でも海外のプログラムに負けたとあっては、と柄にもなく
愛国心?を燃やして、1次予選で落ちてくれることを祈っていた(^^;)のですが、
シルバーは予想通り5戦全勝で1次予選を抜けてきました。

他に1次予選を抜けたのは同じく全勝で「桜」、どこかで聞いた事あるような名前の
「Deep Purple」、「M-R」、「謎的電棋」の4チームでした。


2.2次予選 前半
00596/00600 CXJ00674 山下 宏     YSS準優勝記 2次予選 前半 ( 8) 99/03/29 07:18 00591へのコメント 1次予選落ちしたプログラムの中に、フィンランドから参加の Universal Shogi + Shocky があったのですが、この表示画面が面白かった!です。 駒が全て人型のキャラクタになっていて、さながらパッと見にはロールプレイング ゲームの画面のようでした。ただ、ちょっと見には、駒の配置がなかなかイメージ 出来なかったので、実用性には少し欠けますけど。 1次予選終了後、余韻を味わう余裕も無く、直ちに2次予選が始まりました。 2次予選シードの15チームに1次予選突破の5チームを足して、計20チームで 決勝への道(5チーム)を競います。 前回5位だった私はここから参加です。 今回は前回以上の混戦になると思い、どんな成績でもいいから決勝に 残って欲しい、と思っていました。 特にスイス式では、最初で負けると、その後連勝しても順位が下がるので 初戦は緊張していました。 手数=67 ▲1四馬 まで 後手:YSS 9.0 後手の持駒:歩  2次予選の第1局はハイパー将棋とでした。 9 8 7 6 5 4 3 2 1 ここでは既にYSSが勝勢ですが、ここから決め +---------------------------+ に行きます。 |v香v桂v玉v金v金 ・ ・ ・ ・|一 △1七香成▲同桂△同桂成▲同玉△1六歩 | ・ ・v銀 ・ ・v銀 ・ ・ ・|二 ▲1八玉△4九金▲3六馬△3八歩成 |v歩v歩v歩v歩v歩v歩 ・ ・ ・|三 まででハイパー将棋が投了。 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 馬|四 | ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・v桂 ・|五 本譜は、幸い受けが無くなって勝ちましたが、 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・v飛 ・v香|六 投了図で、もし、1六の歩を王手で抜かれる | 歩 歩 ・ ・ 歩 歩v歩 歩 歩|七 順があれば、逆転してしまいます。 | 香 角 銀 ・ ・ ・v金 ・ 玉|八 | ・ 桂 ・ 銀 ・ 金 ・ 桂 香|九 将棋の難しさの一つに、何枚駒を渡そうが、 +---------------------------+ 寄せてしまえば勝ち、というのがあると思 先手:ハイパー将棋 います。つまり、中盤でいきなり直線的な 先手の持駒:飛 歩二  深い読みを必要とするのです。 ただ、寄れば勝ち、寄らなければ攻めが切れて負け、と極端なので踏み込む方も 怖いところですが。 3.2次予選 中盤
00601/00603 CXJ00674 山下 宏     YSS準優勝記 2次予選 中盤 ( 8) 99/04/07 06:52 00591へのコメント 2戦目は天野将棋と。 天野さんは、囲碁プログラムも作られていて、私も囲碁を作っているので、 そちらの方でも面識がありました。ただ、囲碁の方はお互いに相当弱くて (プログラムも自身の棋力も^^;)世界トップから3馬身ほど離されてます。 今回は天野さんの息子さんも将棋プログラムを作って大会に参加しており (残念ながら1次予選落ち)、横で観戦されていました。 今大会は、全て振飛車でいこう、と思い、それで調整していたのですが、 全14局中、この将棋だけは、先に振られたので居飛車になりました。 第3局は、川端将棋。 作者の川端さんは、自身も県代表になったことがあるほどの強豪です。 前夜、ホテルで同室だったので色々と話をできました。 当たればいいですねー、などと話していたのですが、何と川端将棋は第1局で 森田将棋を倒して!の2連勝同士の対戦になりました。 印象的だったのは、第8回大会で川端将棋が見せた戦法です。 3間飛車から石田流にして、急戦にも対応した穴熊にがっちり組み上げます。 初めて見たときは、その優秀さに感激しました。 また、Javaで!書かれており、ちゃんとInternetExplore4.0で動いていました。 速度はC言語に比べて1.3倍ほど遅いそうです。 他には共謀数を使った詰将棋もあり、対森田戦では23手詰!に仕留めています (最短だと17手詰ですが)。また、相手の思考中にも考える、など完成度が 高かったです。 展開によっては危ない、と思っていましたが、幸い展開に恵まれ? 相振になってYSSの勝ちに。 第4局は、KFENDさんと。 元は棋譜閲覧ソフトだったそうです。 対局中はずーっと話をしていました。手筋をブラックボックスみたいにして、 一連の手を素早く読めないか、とか。この将棋も相振になりYSSの勝ち。 第5局、森田さんと。いよいよ旧4強とぶつかります。 19手目まで定跡でお互いノータイムで進み、YSSが振飛車穴熊になり勝ち。 森田将棋は対振があまり得意ではないので、最近では狙われてる気もします。 ここまで5連勝で、予選突破は確実になったのでかなりホっとしました。 結果論にもなりますが、以後の全ての対局は、どっちが勝ってもおかしくない 将棋で、決勝にさえ残れれば、優勝の可能性はあると思っていました。 また、同時に予選落ちする確率も十分にあり、チャンスが消えるのが怖かったです。 4.2次予選 後半
00602/00603 CXJ00674 山下 宏     YSS準優勝記 2次予選 後半 ( 8) 99/04/08 09:52 00591へのコメント 2次予選 6局目は、これも5戦全勝の柿木将棋と。 事前に色々話した結果、お互いにもっとも多く対戦させあっている事が判明。 私は柿木将棋とは、200局近く対戦させて、その戦形と勝率をまとめていました。 その結果、柿木将棋の勝率が最も高かったのが、YSSの振飛車、美濃囲いに対して 穴熊をしてくる場合で9勝9敗。YSSも穴熊にするとYSSの11勝7敗。 相手が穴熊にした場合の専用の評価関数なども組み込みましたが(多少、王様から 遠くても金銀でべたべた絡む形を高く評価し、1枚、駒をはがす事の評価を高くし ています)、それでも穴熊に組まれると勝ちづらくなるのは否定できません。 ただ、お互い、予選通過がほぼ確実となった本局、談合?が成立して、 奥の手は決勝で見せあう事になりました。 手数=72 △1八歩打 まで 後手:YSS 9.0 後手の持駒:角  9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ 戦形は相振り。 |v香v桂 ・v金 ・ ・v飛 ・ ・|一 | ・v玉v銀 ・v金 ・ ・ ・ ・|二 YSSの攻めが切れそうな局面ですが、 |v歩v歩v歩 ・v銀 ・ ・ 馬 ・|三 ここでの△18歩が地平線効果を誘った? | ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ 歩|四 好手で以下、▲22馬△66角▲同馬△同歩 | 歩 歩 歩v歩 ・ ・ ・v桂 ・|五 ▲56角に、△19歩成!▲同銀△67歩成! | ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ 香|六 の連続成り捨ての技が決まりました | ・ ・ ・ ・ 歩 金 ・ 歩 ・|七 (取れば△55角)。 | ・ 飛 ・ ・ ・ 金 歩 銀v歩|八 | 香 桂 香 ・ ・ ・ 玉 桂 ・|九 こういう成り捨てを正しく読むのは人間 +---------------------------+ でもコンピュータでも難しいです。 先手:柿木将棋 先手の持駒:銀 歩四  最終局は永世名人。 戦形は相穴熊。はっきり言って、序盤は見ていて全然面白くない将棋です。 作者の吉村さんにいたっては、「見ても分からん」と、席を立ってしまいます。 うーん。 金沢将棋は今大会で居飛穴に対して、藤井システム!で対抗する作戦を見せて 来ており、コンピュータ将棋のために高度な戦法も勉強しないと、と思っています。 手数=116 △2二同玉 まで 後手:永世名人 後手の持駒:金 桂二 歩二  9 8 7 6 5 4 3 2 1 途中、必敗でしたが、終盤の永世名人の +---------------------------+ 数手の緩手により形勢は一瞬で逆転、 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|一 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v玉v香|二 ここから、YSSの指し手は▲23馬!。 |v歩 ・ ・ ・ ・ ・v銀v歩 ・|三 15手の即詰です。 | ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・v歩|四 | 歩 ・v歩 歩 ・ 馬 ・ ・ ・|五 人間の実戦でこんな手がでれば感動ですが、 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六 いかんせんコンピュータ相手に何度もこう | ・ ・ 歩vと ・ 金 ・ 歩 ・|七 いう光景を見ていると、「ああ、詰んだか」 | ・ ・ ・vと ・ ・ 銀 銀 香|八 の一言で終わってしまうのが面白くないと | 香v龍 ・v龍 ・ ・ 歩 桂 玉|九 ころです。 +---------------------------+ 先手:YSS 9.0 先手の持駒:角 金 銀 桂 香 歩四  決勝リーグの金沢-柿木戦では、解説の勝又5段も驚いていた21手詰!が 出たのですが、当の金沢さんの「そんなの当然でしょう」というクール な反応(^^;)が印象的でした。 全局終わって、予選通過は、YSS(7勝)、柿木将棋(6勝)、永世名人(5勝)、 宗銀(5勝)、シルバー将棋(5勝)の5チームでした。 くしくも予選全勝、と2年前に全勝優勝したときと同じ結果になりましたが、 2年前とは内容が違うので、依然、状況は厳しいと思っていました。 もちろん、全然期待していなかったといえば嘘になりますが・・・。 強さというのは確率の問題であり、その確率を少しでも高めるために 改良しているからです。 決勝の1局目、早くもそれを痛感させられることになります。 5.決勝 前半
00603/00603 CXJ00674 山下 宏     YSS準優勝記 決勝 前半 ( 8) 99/04/14 09:08 00591へのコメント 決勝の1局目は、昨日戦ったばかりの永世名人と。 しかも連盟の角(すみ)さんの振り駒で先後まで同じに。 なお、振り駒は地面に白い布をひいて、5枚の歩を1mぐらい放り上げる、 という実に本格的なものでした。これで全局の先後を決定します。 吉村さんが変更してます、と断言したので、特別何もしない事にしました。 永世名人のマシンは PentiumIII/560MHz という現在はまだ存在しない 怪しい(^^;)マシンです。これは、よく聞く「クロックアップ」という方法で 無理矢理、動作周波数を上げており、参加者の中では2番目に速いパソコンでした。 では1番速かったのは?、というと、かく言う私のパソコンで、(株)Compaqさん からお借りしたXP1000(Alpha21264/500MHz)というパソコンです。 YSSの実行速度はAlpha21164/500MHzより1.67倍速かったです。 多分、PentiumIII/560MHzよりは 1.2〜1.3倍程速いと思います。 さて将棋は、YSSの四間飛車左美濃に永世の居穴熊。 手数=28 △2二銀 まで 後手:永世名人 後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 ここから▲64歩△同歩▲同飛△86歩▲同歩 +---------------------------+ △88歩▲同角△86飛▲68飛△87飛成、と進み |v香v桂 ・ ・ ・v金 ・v桂v玉|一 あっさり不利になります。 | ・v飛 ・v銀v金 ・ ・v銀v香|二 |v歩 ・v歩v歩 ・ ・v角v歩v歩|三 私自身が居飛車党なので、振飛車の感覚が | ・ ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・|四 全然分かってないのが痛いところ。 | ・v歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 ・ 銀 歩 ・ ・ ・|六 どうも振飛車というのは、先に飛車を成らせ | 歩 歩 角 ・ 歩 ・ 歩 歩 歩|七 て、桂を1枚ぐらい取られてから、こちらも | ・ ・ ・ 飛 金 ・ 銀 玉 ・|八 飛車を降ろして桂香取り返す。そして王の堅 | 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九 さで勝負!という傾向があるので、先に駒損 +---------------------------+ するのを嫌うコンピュータ向きではないのか 先手:YSS 9.0 も知れません。 先手の持駒:なし もしくは、まだ読みの深さが足りないのです。本譜はこの後▲67歩、という悪手が 出て敗勢に。粘ったものの痛い敗北を喫しました。 第2局はシルバー将棋と。 シルバー将棋は2次予選で2敗しているのですが、実は両方とも時間切れ負け、 (内容はどちらも勝ち)と初出場としては異色の強さでした。 シルバー将棋の表示画面は製品版開発のためか、きれいな画面です。 画面の背景には、将棋の駒を円形にデザインしたものが書いてあり、 日本人にはない感覚です(チャンギの駒が丸いのに由来してるそうです)。 担当の山本さんによると、チャンギ(朝鮮の将棋)は駒を叩き付ける?過激な ゲームだそうで、日本の将棋とは(別の意味で)迫力が違いそうです。 手数=31 ▲2八玉 まで 後手:シルバー将棋 後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 シルバーは、ものすごくいいかげんな序盤 +---------------------------+ で左図。YSSが向かい飛車なのに、相手は居玉 |v香v桂 ・ ・v玉v金v銀 ・ ・|一 で33桂とか12香とか指しています。 | ・v飛 ・v銀v金v角 ・ ・v香|二 ここから△75歩以下、戦いになりましたが、 | ・ ・ ・v歩 ・ ・v桂v歩 ・|三 さすがに陣形の差が大きく、YSSの勝ちに。 |v歩 ・v歩 ・v歩v歩 ・ ・v歩|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|五 しかし、途中駒の取り合いになると実に正確 | 歩 ・ 歩 歩 銀 歩 ・ ・ 歩|六 で、分れが不利だったら負けても全然おかし | ・ 歩 角 ・ 歩 ・ 歩 歩 ・|七 くないと思いました。 | ・ 飛 ・ ・ 金 ・ 銀 玉 ・|八 開発者の中にはチャンギの大学生名人!も加 | 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九 わっているそうで、もう少し将棋の勉強をさ +---------------------------+ れると、より手ごわくなりそうです。 先手:YSS 9.0 先手の持駒:なし しかし、シルバーには勝ててホッとしました。星勘定で、というのもありますが、 やはり囲碁でやられて将棋でも負けては立つ瀬がないですから。 6.決勝 中盤
00611/00612 CXJ00674 山下 宏     YSS準優勝記 決勝 中盤 ( 8) 99/04/22 01:40 00591へのコメント 第3局は柿木将棋。 戦型は予選のところでも書きましたが、予想通りYSSの振飛車に柿木将棋の居飛穴。 手数=53 ▲7二歩打 まで 後手:YSS 9.0 後手の持駒:歩三  YSSが銀を繰り出して陽動作戦に出た 9 8 7 6 5 4 3 2 1 ところを返り討ちにあい左図。 +---------------------------+ |v玉v桂v金 ・ ・ ・ ・v桂v香|一 次の▲65飛の十字飛車が見えているので、 |v香v銀 歩 ・v金v角 ・v飛 ・|二 本来なら△62金上と我慢するところですが、 |v歩v歩 ・ ・v歩 ・ ・ ・v歩|三 △72金▲65飛△74歩▲61飛成△62金右▲41龍 | ・ ・ ・ ・ ・v歩 歩 ・ ・|四 △51金、で龍を取れる、と判断して、YSSは | ・ ・v銀v歩 ・ ・ 飛v歩 ・|五 △72同金。 | 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六 | ・ 歩 ・ 歩 銀 歩 ・ ・ 歩|七 しかし、本譜どおりに進んだ後、最後に | 香 銀 金 角 ・ ・ ・ ・ ・|八 ▲33歩成!の成り捨てる好手があり、 | 玉 桂 金 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 △同角、▲31龍と逃げられると、次の▲34歩 +---------------------------+ などがあり(△24飛には▲66銀!)、攻めが 先手:柿木将棋 切れそうにはありません。 先手の持駒:なし 手数=87 ▲7一桂成 まで 後手:YSS 9.0 後手の持駒:飛 銀 歩三  9 8 7 6 5 4 3 2 1 不利なまま進んで左図。 +---------------------------+ |v玉v桂 圭 ・ ・ 杏 と ・ と|一 ここで、△68成桂が詰めろなのですが、 |v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二 あいにく後手玉は▲82銀以下の詰めろ。 |v歩v歩 ・ ・v歩 ・ ・ ・v歩|三 | ・ ・v歩 ・ ・v歩 ・v角 ・|四 本譜は△63銀と取りあえず防ぎますが、 | ・ ・v銀 ・ ・ ・ ・v歩 ・|五 ▲73金!のしびれる必死がかかり負け | 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六 になりました。 | ・ 歩 ・ 歩v圭 歩 ・ ・ 歩|七 | 香 玉 金 角 ・ ・ ・ ・ ・|八 他の手でも勝ちですが、この手は読んで | ・ 桂 金 ・ ・ ・ ・v龍 香|九 いなかったのが悔やまれるところです。 +---------------------------+ 先手:柿木将棋 1手違いにするのが精いっぱいの将棋でした。 先手の持駒:金二 銀二 さすがに2敗したので優勝は無理か、と思いましたが、残り全部勝てば・・・、 と淡い期待は持っていました。全勝で優勝するのは至難の技だと思っていたのです。 さて、ここで、唯一3連勝の金沢将棋と当たります。 YSSは1勝2敗。全然勝てそうにないですが、そこはコンピュータ将棋の怖いところ。 手数=17 ▲3七桂 まで 後手:YSS 9.0 後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 わずか17手目、▲37桂。これが敗着でした。 +---------------------------+ |v香v桂v玉v金v金 ・v銀v桂v香|一 以下、△24角からYSSはほぼ完璧に指して | ・ ・v銀 ・ ・ ・v飛 ・ ・|二 勝ちます。 |v歩v歩v歩v歩v歩 ・v角v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四 今回、金沢将棋は居飛穴対策で藤井システム | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 が組み込まれていたのですが、YSSの振飛車 | ・ ・ 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ ・|六 に対して間違って藤井システムに組んでしま | 歩 歩 角 銀 歩 歩 桂 歩 歩|七 いました。 | ・ ・ ・ 飛 ・ ・ 銀 ・ ・|八 | 香 桂 ・ 金 玉 金 ・ ・ 香|九 たった1行のif文の間違い。それだけで勝敗が +---------------------------+ あっさりついてしまうのです。 先手:金沢将棋 先手の持駒:なし 手数=67 ▲6四歩 まで 後手:YSS 9.0 後手の持駒:桂 歩三  9 8 7 6 5 4 3 2 1 既に勝ちですが、ここでYSSは△45銀、 +---------------------------+ 金を取ります。 |v香v桂v玉v銀 ・ ・ ・v金v香|一 | ・ ・ ・ ・v金 ・v銀 ・ ・|二 当たり前の指し手ですが、YSSがこの手が |v歩v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三 詰めろに(△15角から13手詰)なっている事を | ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・v角 ・|四 理解して指したのがうれしかったです。 | ・ ・ ・ ・ ・ 金 ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・v銀 ・ ・|六 勝ったのはもちろんうれしかったのですが、 | 歩 歩 ・ 銀 歩 ・ ・ 歩 歩|七 内容が悪かったのが残念でした。 | ・ ・ ・ 飛 金 玉 ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ 桂 ・v飛 香|九 多少の悪手はあってもいいですが、どちらも +---------------------------+ もっとぎりぎりの勝負をして欲しい、 先手:金沢将棋 いい棋譜が残って欲しいと思っています。 先手の持駒:角  7.決勝 後半
00612/00612 CXJ00674 山下 宏     YSS準優勝記 決勝 後半 ( 8) 99/04/22 01:40 00591へのコメント 第5局は宗銀。 宗銀は最近は決勝リーグの常連ですが、今回は決勝では7連敗、と他のソフトとは 少し差があったと思います。 作者の小泉さんの打ち上げの席での「成績はご覧の通り団子7兄弟でしたが・・・」 の発言は面白かったです。 第6局、前回の覇者、IS将棋とです。 前回、ぼろぼろに完敗したのが相当ショックで、YSSを大会後、しばらく改良して、 棚瀬さんに挑戦状を送り付けたり(^^;)してましたが。 YSSの4間飛車にIS将棋は急戦模様できます。 手数=84 △6八銀打 まで 後手:IS将棋 後手の持駒:なし 押え込まれそうになって左図。 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ ここで、YSSは既にただの角を▲79角!と |v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一 またただで捨てます。週刊将棋の解説では、 | ・ ・ ・ ・v金 ・ ・v玉 ・|二 △57銀成を遅らす好手!と誉めていただけ |v歩 ・ ・v銀 ・v歩v桂v歩 ・|三 ましたが、会場では勝又5段から、 |v飛 ・ ・ ・v歩 ・v歩v金v歩|四 「もっと終盤じゃないとね」と酷評されて | ・ 歩 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|五 いました(^^;) | 歩 ・v桂v歩 ・ 歩 ・ 歩 歩|六 | ・ ・ ・v馬 歩 金 歩 ・ ・|七 ちなみに実際は△79銀不成、△68銀、と戻っ | ・ 角 ・v銀 ・ 飛 銀 玉 ・|八 てくる手を読み抜けていたのが原因でした。 | 香 ・ ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 以下、飛車の捕獲に成功して、さすがに陣形 先手:YSS 9.0 の差からあっという間に寄ってしまいました。 先手の持駒:銀 桂 歩二  局後、プロ棋士の凄さを見ました。 この将棋は解説されていなかったのですが、終局後に勝又5段が棋譜のディスプレイ の表示をざーっと30秒ほど眺めた後、「よしっ!」と言って、すべて記憶して大盤で 解説して頂いたのです。 自分の棋譜を最後まで並べるのはアマでも高段者なら簡単なのですが、 人の棋譜、しかもコンピュータの脈絡のない序盤の棋譜を覚えるのは至難の技です。 最終局はShotest。イギリスからの刺客です。 この将棋に勝って、IS将棋が金沢将棋に勝つと優勝まである、と聞いて、 対局前に、マシンに手を置いて念を送っていましたが・・・。 序盤早々、あっという間にYSSが銀桂交換で不利になります。 うーん、こんなことはめったにないのですが・・・。 Shotestは12台のコンピュータを使って40000局!も他のプログラムと自動対戦 させていたそうで、YSSのこういう弱点も見抜かれてしまったのかもしれません。 ちなみにAI将棋3との勝率は7割を超えている、とのこと。 前回(第8回)もすぐに序盤で必敗になってしまって、どうもShotestには 分が悪そうです。 手数=96 △2五同玉 まで 後手:SHOTEST 後手の持駒:角 桂 歩九  9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ しかし、混戦に持ち込み左図。 | ・ 龍 ・ ・v銀 ・ ・ ・v香|一 | ・ ・ ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二 王と王が睨み合う、まさに玉頭戦!。 |v香 ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・ ・|三 惜しむらくはここで歩切れ、かつ攻め駒 | ・ ・ ・v銀 ・ ・v歩 ・ ・|四 不足なところ。 | 歩v歩 ・ ・ ・ 桂 ・v玉 ・|五 | 桂 ・ ・ ・v歩 歩 歩 ・ 香|六 以下、▲11香成、と補充しますが、 | ・ 歩v馬v銀 ・ 金 ・ ・ ・|七 その瞬間に△16桂の王手から寄せきられて | 飛 ・ ・ ・ ・ ・ 銀 玉 ・|八 しまいました。 | 香 ・ ・ ・ ・ 金 ・ ・ ・|九 +---------------------------+ 先手:YSS 9.0 先手の持駒:桂  優勝も消えたので、優勝決定戦になったIS−金沢戦を眺めていました。 これが、双方時間切れ寸前の大熱戦。 解説も興奮していて、まさに手に汗握る将棋でした。 最後は、必死がかかってIS将棋が潔く投了。 この瞬間、3年ぶり5度目の金沢将棋の優勝が決まりました。 勝った瞬間、いつもは冷静な金沢さんが(ちがったかも)歓声をあげたのは 印象的でした。 YSSも4勝3敗とぎりぎり勝ち越しながら、幸運にも2位。 IS将棋は同じく4勝3敗で勝ち越していたのに、なぜか半分より下の5位でした。 激戦だったと思います。それでも金沢将棋が6勝1敗で優勝した、ということは明確 に差はありました。それは、ほんの少しの差かもしれませんが、その少しの差を埋 めるのがとても大変なのでしょう。 毎回、海外勢の参加も増えてきて、来年以降、また厳しい戦いになると思います。 新風を巻き起こしてくれる参加者を期待するとともに、よりレベルの高い棋譜を コンピュータが残して行けるように改良していきたいと思っています。 既に大会から一月も経ってしまって、やや興ざめですが、 最後まで読んでくださったみなさん、ありがとうございました。
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