1997年9月24日。フジテレビの企画で、元真剣師の大田学さんと将棋プログラムYSSを 戦わせる(平手)というものがあり、大阪は通天閣、じゃんじゃん横町まで行って来 ました。 大田学さんは、朝の連ドラ「ふたりっこ」の銀じいのモデルと言われる人で 年は80を越してるはずです。(第1期の朝日アマ名人です) 放映は10月2日、フジテレビで午後17時55分からの「ヒューマン」という番組の中 で18時25分頃から10分間流れる予定です。ただし関東圏限定です。 通天閣の商店街には、真菜、香奈のイラストが入った「ごっつええやん新世界」の 旗がたくさん並んでます。 じゃんじゃん横町には160円のうどん屋さん、立ち食いの飲み屋などがひしめき 合っており、朝もはよからおっちゃん達が一杯やっていい気分で歩いていました。 横町には将棋道場(王将と三桂クラブ)が並んで2件もあり、(通天閣の地下も 含めると3件!)窓には立ち見のお客さんであふれています。 通天閣の地下の道場は閉鎖のうわさもありましたが未だ健在。歌謡ショウの歌姫 のポスターがべたべた張ってある地下の入り口を入ると、地下室らしい、ツンと すえた匂いが立ちこめます。ここに一人で入るのは結構勇気がいります。 こんな所に道場があるんかいな、と思い進んでいくと、ほぼテレビのふたりっこ のイメージどおり、右に歌謡ショウの舞台、左に畳張りの道場がありました。 道場には大田学さんが銀じいさながら座って師範をされています。 さて、対局は「王将」の道場で行われました。重さ15Kgあるコンピュータと ディスプレイをセッティングして待つことしばし。午前10時、さっそうと銀じい (大田学さん)登場!。好々爺、といった雰囲気を漂わせています。 この人が小池重明や加賀敬治とかと真剣で戦った人かー、と感慨にひたりながら 対局は始まりました。大田さんの前には私が座って1手指すごとにマウスと将棋盤 の間を行ったり来たりします。 序盤は私の作戦どおり角替わりに持ち込み、まあ互角。しかし、仕掛けに入り あっと言う間に形勢は大田さん大優勢!。以下、禍根の根を完全に絶たれて将棋を 指してもらえず、無念の投了。うーん、真剣師というのは相手を再起不能にする 指し方をするのか・・・(単にコンピュータが弱すぎただけ、という話も) 終わって大田さんが一言。 「もっと強いと思うとったが、こんなもんか。後5年は大丈夫じゃの」 くー、くやしー!。しかし私本人が戦ってもおそらく勝てないので、ここは 辛抱の1手。にこやかに握手をして閉会となりました。 余談ですが放映された番組はプロが編集しただけあって、面白くない素材 (対局内容)を巧みにベールに隠して、面白い内容になっていました。 ------------------------------------------------------------------------------- 以下は棋譜と簡単な解説です。 YSSの機械はAlpha500MHzを使っています。 対局場には電総研の松原さんもいらして下さいました。 # 対局日 :1997/09/24(水) 10:47:02 # 対局場所:将棋道場「王将」大阪通天閣 じゃんじゃん横町 先手:YSS7.0 後手:大田 学 ▲7六歩 △8四歩 ▲7八金 △3四歩 ▲4八銀 △8五歩 ▲6九玉 △3二金 ▲2二角成 △同 銀 ▲8八銀 △3三銀 ▲5八金 △6二銀 ▲7七銀 △7四歩 ▲7九玉 △4一玉 ▲6六歩 △5二金 ▲8八玉 △6四歩 ▲6七金右 △6三銀 ▲2六歩 △4四歩 ▲2五歩 △5四銀 ▲9六歩 △9四歩 ▲4六歩 △3一玉 ▲4七銀 △7三桂 ▲6八銀 △1四歩 ▲3六歩 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩 △8二飛 ▲3八飛 △2二玉 ▲1六歩 △6五歩 ▲同 歩 △4五歩 ▲4八飛 △4六歩 ▲5八銀 △4三金右 ▲5六金 △4四銀 ▲6四歩 △8六歩 ▲同 歩 △8五歩 ▲7五歩 △8六歩 ▲8三歩 △同 飛 ▲7四歩 △7六角 ▲9八角 △同角成 ▲同 香 △7六角 ▲6七金 △9八角成 ▲7九玉 △8七歩成 ▲8八歩 △7八と ▲同 玉 △8八飛成 ▲6九玉 △8九龍 ▲7九角 △7八歩 ▲7三歩成 △7九歩成 ▲5九玉 △6九と ▲同 銀 △5五桂 ▲同 金 △同銀直 ▲3九桂 △4七香 ▲同 桂 △同歩成 ▲同 飛 △3八角 ▲4八飛 △4七桂 ▲5八玉 △2九角成 ▲5六歩 △6六歩 ▲5五歩 △6七歩成 ▲同 銀 △6六歩 ▲5六銀 △7六馬 ▲5七玉 △6九龍 ▲1三銀 △同 香 ▲3八香 △5九龍 ▲5八桂 △4五桂 ▲同 銀 △同 銀 ▲4七飛 △5八龍 まで118手で後手の勝ち YSS の思考時間:21分08秒 大田さんの思考時間:19分51秒(手入力含む) 大田さんが長考したのは 52 4三金(52) (02:04/ 0:08:38) 54 4四銀(33) (01:56/ 0:10:34) 56 8六歩打 (01:32/ 0:12:06) この3手だけで、後はほとんど時間はかかりませんでした。 敗因は突き詰めると「対局したこと」にでもなりそうですが、それでは進歩が ないので少しだけ感想を述べますと、 56手の86歩以下の継ぎ歩攻めから十字飛車(25飛、と回って28歩に39角)のスジを まったく読んでいなかった事。さらに74手目の76角、という次に歩を成りますよ、 という手をYSSはまったく読んでおらず、その唯一の受けである69角打も、金の利き の影から打つためまったく読んでいませんでした。 この攻防の後は一方的な展開になってしまって、良いところはまったくありません でした。 また、時間が余ったので遊びでもう一局対局していただいた棋譜も流します。 先手:YSS7.0 後手:大田 学 ▲7六歩 △8四歩 ▲6八飛 △8五歩 ▲7七角 △3四歩 ▲6六歩 △6二銀 ▲3八銀 △5四歩 ▲7八銀 △4二玉 ▲6七銀 △3二玉 ▲5六銀 △4四歩 ▲5八金左 △4二銀 ▲4八玉 △4三銀 ▲3九玉 △7四歩 ▲8八飛 △5二金右 ▲6五銀 △7三銀 ▲5六銀 △8四銀 ▲6五銀 △7五歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲7六歩 △8四銀 ▲3六歩 △4五歩 ▲7八飛 △6四歩 ▲5六銀 △5五歩 ▲6七銀 △5四銀 ▲5九角 △7二飛 ▲2八玉 △4三金 ▲3七角 △4二金直 ▲9六歩 △7三銀 ▲7五歩 △7四歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲9五歩 △7五歩 ▲5九角 △6五歩 ▲3七角 △6六歩 ▲同 銀 △6五歩 ▲7七銀 △6三銀右 ▲6七歩 △1四歩 ▲5六歩 △5二飛 ▲8八銀 △7二飛 ▲2六歩 △7四飛 ▲7七銀 △4六歩 ▲5五歩 △同 銀 ▲4六歩 △5六歩 ▲4七銀 △5四銀 ▲5七歩 △同歩成 ▲同 金 △7三桂 ▲5九角 △6四銀 ▲8八銀 △7六歩 ▲5八金引 △7五銀 ▲7七歩 △同歩成 ▲同 角 △5五歩 ▲5九角 △7六歩 ▲5七歩 △6六歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲6七歩 △7五銀 ▲4八角 △6五桂 ▲5九角 △6六歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲7五歩 △同 飛 ▲6三歩 △5七桂成 ▲9四歩 △同 歩 ▲3八金 △5六歩 ▲7七歩 △5八成桂 ▲同 銀 △5七歩成 ▲7六歩 △6五飛 ▲7七桂 △6三飛 ▲5三歩 △6七と ▲同 銀 △同銀成 ▲7五桂 △6六飛 ▲7九飛 △6八成銀 ▲4八角 △6七飛成 ▲3九飛 △5八成銀 ▲3七角 △4七歩 ▲6四歩 △4八歩成 ▲5二歩成 △同 金 ▲6三歩成 △4二金寄 ▲6四と △3九と ▲同 金 △6六角 ▲3八金 △4九銀 ▲1八玉 △3八銀不成▲5四と △2七金 まで154手で後手の勝ち これは強い人が弱い人に勝つ典型的な勝ち方、ではないかと思うのですが、 駒組段階で少しずつポイントを稼がれ、後はドカンと来られて、これも形さえ 作れませんでした。 1局目は読みで負け、2局目は大局観で完敗し、人間の高段者までは、まだまだ 遠い、と思いました。